1.AM放送波の伝搬
Fig.1にMF帯放送波の伝搬の様子を示す。電離層D層は60km~90kmに昼間のみ存在する。VLF/LF帯電磁波は
反射し、MF帯以上の電磁波に対しては減衰させる。E層は90km~130kmにあり昼夜を問わず存在する。
従って夜間のみMF帯の電磁波を反射し遠距離に到達する。
電波伝搬損失は Loss (dB)=20*log(4*π*r/λ) (λ=波長、r=距離)で表される。
1000kHzの伝搬損失は2000kmで98dBになる。電離層での減衰は経験的に約70dB程度と考えられる。
例として50kWの送信電力で発射された放送波の受信電力を求める。
送信電力は[dBm] = 10*log10([watts]*1000)にて換算すると+77dBmになる。
送受信アンテナのGainは0dBとすると受信電力は
+77dBm-98-70=-91dBm となり、この辺が受信限界と考えられる。
つまり、AM放送波の伝搬は2000kmが限度で、電離層で1Hopしか反射しないと考えられる。
実際には相模原では約1000㎞の札幌、釧路、熊本、鹿児島の局をかろうじて受信できる。
一方VLF/LF帯は伝搬損失も電離層での減衰もMF帯ほど大きくはなく、地球を半周以上伝搬する。
このことからMF帯のAM放送波を活用すれば震源領域の特定がしやすいと言える。日本及び近隣諸国の送信局の
識別は比較的容易で周波数帳により周波数で確認でき、音声の確認も容易で時折のCall Sign、交通情報、
Local News、音楽番組のRequest者の住所等で確認できる。
Fig.1 MF帯AM放送波の電波伝搬図
2.AM放送波パスと予測震源領域
Fig. 2に示すようにこの方式は少ない観測点で全国の震源領域をカバーできる、また予測震源領域を
特定しやすい特徴を持つ。M=6程度以下では送信点-受信点間の中心から半径50㎞が予測震源領域と仮定している。
全国の震源領域を隙間なく観測するには樺太、択捉島、台湾、フィリピンでの観測を必要とする。
Fig.2 国内4観測点による全国観測
3.AM放送波活用電離層擾乱観測データの見方
このサイトのトップページの“観測データ”ボタン→“電離層擾乱観測データ”でご覧いただけます。
4.AM放送波活用電離層擾乱観測例
Fig.3に札幌→相模原の1日の観測データ例を示す。Fig.4に札幌→相模原の最新約4か月の朝夕の受信終了・開始時刻変動の
標準偏差例を示す。σ=2を越したのは4回のみである。Fig.5 に札幌→相模原のパス上の予測震源領域を示す。
予測震源領域は秋田県、岩手県西部、宮城県北部である。List-1にσが2を越した日と概ね1週間以内に発生した予測震源域で
発生した地震のListを示す。
Fig.3 札幌→相模原の1日のData Graph
5.電離層擾乱観測統計グラフの見方
このサイトのトップページの“観測データ”ボタン→“電離層擾乱観測統計グラフ”でご覧いただけます。
Fig.4 札幌→相模原の最新約4か月の朝夕の受信終了・開始時刻変動の標準偏差
6.標準偏差について
(1) 標準偏差に関する分かりやすい解説は→こちらをご参照
(2) 平均値とは→こちらをご参照
(3) データの確率分布(正規分布)は下図のように表されます。
(画像引用元:正規分布-wikipedia)
・平均値からのずれが±1σ以下の範囲に含まれる確率は68.27%、±2σ以下だと 95.45%、更に±3σだと 99.73% となる。
・±2σのづれということは4.55%しか起こらない異常、±3σのづれということは0.27%しか起こらない異常と言えます。
・当面中波帯AM放送波の朝夕の受信終了/開始時刻のづれが±2σ程度で、1~2日あればM=4級、±3σ程度で、
1~2日あればM=5級、3日以上継続すればM=6級以上と判断します。
Fig.5 札幌→相模原のパス上の予測震源領域
List-1 σが2を越した日と1週間以内に発生した予測震源域で発生した地震のList
本Web Site上の全てのデータ及び記述はご覧になった方の自己責任でお使い下さい。
当センターの関係者はお使いになった結果に対して何ら責任を負うものではありません。
Copyright
(c) NPO法人 地震前兆総合観測センター (JEPCOC) . All rights reserved.